【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ2)

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新生活はページ2

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駅に迎えが来てくれる、そう聞いていたけれど、迎えなんてすぐ分かるのだろうか。Aはそう考えていた。父親の顔も分からないのに、知らない人に迎えに来たと声をかけられたらついて行ってしまうかもしれない。写真すら祖母の家には一枚もなかったのだ。どうしよう、と到着直前になって一気に不安が押し寄せてくる。
ぐるぐると考えながらとりあえず駅の改札を出たところで、声がかかった。

「待ってたで、Aちゃんやろ！顔が親父そっくりやから、すぐ分かったわ！」

肌が小麦色に日焼けしたスーツ姿の細身の男性が、ニッと口角を横に伸ばして白い歯を見せるみたいに笑った。人懐っこい笑みだ。その人は、するりと自然な動作でキャリーケースを引き寄せると、こっちやで、と黒光りしていて窓にはスモークフィルムが貼ってあるイカつい車に誘導する。Aは思った。ああ、いかにもだな、と。

「俺はシャオロンです。お嬢、お帰りなさい！」

トランクに荷物を乗せた男は、後部座席にAを座らせてそう言った。運転席に座っている男が軽く会釈をして車を走らせる。Aは顔に出ないようにしたつもりだが、内心苦い顔をした。だって、あまりにも、あまりにもすぎる。
Aは背負っていたリュックを膝に乗せた。

「た、ただいま、です。あ、はは。」

煙草の匂いを掻き消すように消臭剤の匂いが漂っている。急ごしらえだったのか、そもそも染み付いてしまっているのか、消しきれていないけれど。
車に乗るなり暑そうに背広を脱ぎ、シャツを腕まくりしたシャオロンの腕を見て思わずギョッとした。鱗だか何だかの和柄の刺青の一部が表出したからだ。思わず声が出てしまいそうだったのを、ガチリと奥歯を噛み締めて堪えた。

「ここまで長かったやろ？こっからはすぐですから。」

人懐っこい笑みを浮かべる目の前の男も、車を運転する男も、これから会うであろう父親も、普通の人じゃない。ここいら一帯を取り仕切っているヤクザ、らしい。
ぎゅうとリュックを抱きしめるように掴む。新生活はヤクザの家で、なんて。
なんとかやっていけるといいな。

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