【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ12)

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ちょっとだけページ12

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「え、何があかんの？」
「何って、だって、こんな車で来たら私がヤクザに関係があるって、分かっちゃうじゃないですか！」
「うん。」
「⋯⋯うん？」
「うん、だからそれの何があかんのって。」
「あかんって⋯⋯わ、私がヤクザの娘だってバレたら、友達できなくなっちゃうかもしれないじゃないですか！」

キンと響いた甲高い声が、自分のものだと信じられなかった。吐き出した分を取り返すかのように肩で息をする。怒鳴ってしまった。その事実にAは自分が一気にみっともなく思えて、項垂れる。言ってしまったものは取り消せない。もう後戻りもできなくて、下唇を噛む。

「あー、別にええんちゃう？」

ぽつりと車内にそんな言葉が放たれた。ゾムは飄々としていた。大きな声で責め立てられたことなんて、まるで少しもなかったみたいに。切れ長の鋭い目がこちらを見ていて、Aは思わず目を逸らした。

「なにそれ⋯⋯。」

酷い。酷すぎる。こんなのってない。他人事だからってどうでもいいと思っているのだ。Aは涙が出そうだった。それを堪えるかのようにすん、と鼻を啜って窓の方を向く。

「お嬢が親父の娘やからって離れていくような友達やったらそもそもいらんやろ。お嬢のことを知って態度を変えるようなヤツは、絶対この先も適当なことすんで。」

冷たいとも思えるくらい真面目な声で、ゾムはそう言った。お嬢が嘘ついて引っ込みがつかんくなる方が困るやろ、と付け加えて。それから、ぐいと身体を伸ばして大きな欠伸をした。
車内が静まり返る。Aは何かを話そうとはしなかった。あんな目の前に車を持ってこられるのは嫌だったという自分の気持ちを大事にするためと、ゾムのいうことは決して間違いではなく、一理あるのかもしれない、と納得した部分が拮抗したためだ。
どことなく気まずい空気のまま家へと帰りついた。家の前へとついたとき、何かを思い出したように、あ、とゾムが口を開く。

「お嬢。敬語、戻ってんで。」

ふはは、と軽快な笑い声が響いた。
その時は、それに対して特に嫌な気持ちを抱くこともなく、言われて見れば、という気持ちだった。しかし、少し時間が経って頭が冷えた頃によくよく考えてみたら、あの時敬語のことを指摘したのは、随分と意地悪なんじゃないかとじわじわ実感する。Aの中で、ちょっとだけ嫌な人だと認識された。
その日の夜は、頭の中がぐるぐるしていてなかなか寝付けなかった。

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