【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ14)

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色水ページ14

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一度寂しいと感じたら、ただの水が色水に変わってしまったときみたいに、元の状態に戻れない。そのうち、全身がしくしくと声をあげて寂しさに溺れはじめた。今まで周囲の人に心配をかけまいと気を張っていた反動で、ヒビが入ってからは酷く脆い。毎日おいしくいただいていたご飯だって、味がしなくなったようで喉を通らなかった。せっかく作ってもらったのに。あとで謝らなきゃ。
ひとりぼっちの部屋は逃げ場がなくて、もう春だというのにひんやりと冷たかった。部屋にひとりでいたくなくて、背を向けて縁側に腰掛ける。空には月が出ていて、空気の澄んだ田舎では星が空いっぱいに広がっていたというのに、ここでは街の灯りが明るすぎて空もぼんやりして見えた。

「おばあちゃん⋯⋯。」

辺りをキョロキョロと見渡して、誰もいないことを確認してから、ぽろりと涙が溢れた。小さく口の端から漏れた寂しいの言葉は、抱え込んだ膝をいとも容易く濡らしていく。いくら成長したからといって、Aだってまだ高校生になりたての女の子なのだ。それが突然ぽんと知らない環境、知らない土地に投げ出されたら、それまでと全く同じようにはいられないに決まっている。Aは、自分が気付かないうちにもあらゆることに気を遣い、神経をすり減らしていたようだった。感情のダムが決壊したように、溢れる涙が抑えきれない。
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら頬を濡らし、夜の少し冷えた柔らかい風が跡をなぞった。ひっく、ひっくと鳴っていた喉が少し落ち着いたところで月を見上げた。

「うわぁーっ！？」

空に浮かぶ三日月を見ようと顔を上げると、そこには今最もよく分からない人間であるゾムが、顔を覗き込むようにして立っていた。その顔の近さにも酷く驚いたが、足音のひとつもさせずに至近距離まで近づいていたことにびっくりして、Aは仰け反った勢いのままごろりと後ろに倒れ込んでしまった。
ゾムはそんなAを見てケラケラと笑っていて、愉快なバラエティー番組でも観ているみたいだった。Aは頭の混乱を片付けられなくて、呆気にとられている。

「なんで泣いてんの？」

それは、何か危機感に迫られたようなものでもなく、かといって棒読みだとか、面倒なものを見た時のような反応ではなかった。どうして泣いているのか、純粋に興味があって聞いているような、そんな態度だった。

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