【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ27)

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とある男の焦燥ページ27

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時は少し遡り、Aが物置に引きずり込まれ、ぽつんとシャオロンが取り残されたところまで戻る。
ゾムを揶揄う面白い材料を手に入れたとワクワクしていたシャオロンは、お嬢を相手に何を吹き込んでやろうかと悪巧みをしていた。自分の知っている何を暴露してやろう、と手始めにえろ小僧ネタを披露した訳だが、特に印象の強いエピソードはどれを話そうか。他にもソシャゲに課金しまくった話だとか、お酒に酔っぱらって頬っぺにちゅーされた話だとか、色々あるし、と手の中にある手札とにらめっこして考えていた。くひひ、と意地悪な笑いをして振り返る。

「あれ？お嬢？」

そこに、Aの姿はなかった。
虚しくも響いたAを呼ぶ声は、本人に届くことなく縁側に溶けた。シャオロンは焦る。キョロキョロと目を泳がせて周囲を見渡した。ついさっきまでいたはずのお嬢がいない。ほんのちょっとしか関わりはないが、Aはシャオロンにも丁寧で、遠慮している感じはあるものの、最初から最後まで礼儀正しかった。少なくとも、話をしている最中に突然どこかへ行くようなことはしないだろうという印象だ。
突然お腹が痛くなったとかではないだろうし、いくら油断していたとはいえ、影も形もなく消えるなんてことがあるだろうか。
これってまずいんちゃう？と思ったシャオロンは、一目散に周囲を探し始めた。何かあったとき、直前まで話していたシャオロンが矢だるまにされるのは、火を見るより明らかだ。別に何も問題がなくてただ部屋に戻っただけであっても、無事であることの確認はしなければ、もしものことがあったときは。そう思い、とにかく家の中のあちこちを探し回った。組員の部屋や縁側、お嬢の部屋、トイレや台所のお鍋の中、しまいにはちょうど入浴中だった鬱のいる風呂場まで確認する始末。「えっ！？うおっ、何！？」これは浴室のドアを開け、中にいるのがお嬢ではなく鬱だと知り、神妙な顔でガラガラガラ、バタン、と閉めるシャオロンを前に鬱が言った言葉だ。鬱だったから良いものの、それがもしお嬢であればただで済むはずがない。ワンチャン命がなかったかもしれないとは思わなかったのだろうか。

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