【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ37)

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カウンターページ37

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Aは、顔を覆いたくなるような恥ずかしさに襲われていた。なぜなら、思っていたような反応と違ったからだ。ゾムは、パーカーの上から着ているジャケットの胸ポケットに、見せつけるかのようにイチゴ柄のファンシーなハンカチを差し込んでいる。それも自慢げに、だ。その上、それを見た周囲の人に似合わへんな、とか、なんでそんなん持ってんの？とか揶揄われたときに、これお嬢からのプレゼントやねんで、とカウンターを食らわせ、言葉を失わせるという行為をよくやっている。

そんなふうに身につけるのは、一日二日だけでなく、洗濯に出しているとき以外は結構な頻度である。もちろん、飾りとして胸にあるわけではなく、ちゃんと使ってくれているみたいだった。
物を大事にする人なんだな。Aはそう思っていた。

「それはAちゃんがあげたからやろ？」

ゾムさんって物を大事にする人なんですね、とポロリとこぼしたAに、鬱はきょとんとした顔で答える。それから辺りを見回して、ごめんね、とポーズをとって煙草に火をつけた。

「え？」
「だってそうやん。別にゾムは特別物大事にする奴でもないで。」

ぽっかりと空に浮かんだ満月が静かに辺りを照らしていた。ぷかりと口から吐き出した煙が立ち上る。ふふ、と笑っている鬱は様になっていて、これが大人の色気というものなのだろうか、とAは唾を飲んだ。

「そう、なのかな。」

そういえば、よく考えてみると最近、ゾムが優しい気がする。前よりも何考えているのか分からないときが減ったし、一緒にいることが当たり前のようになってきているのだ。
Aは考えれば考えるほど、最初の頃と大きな差を感じていた。そこで、Aは思った。もしかしたら、ゾムは優しく接すれば、優しく返してくれるのではないか、と。普通に考えれば人間として当たり前のことなのだけれど、ここ最近Aはゾムにどこかで仕返しをすることしか頭になかった。そんなのだから、ゾムに意地悪ばかりされていたのかもしれない。
纏わりつくような湿気の多い空気が、Aを優しく抱きしめるようだった。

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