【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ41)

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そんなのページ41

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しばらくすると、男たちの叫び声がぴたりと止んだ。ただ、それと引き換えにサイレンの音が鳴り始める。救急車でも、消防車のものでもない。これは、間違いなくパトカーのサイレンだ。遠くから、だんだんとこちらに近づいてきている。近隣の人が、さすがに通報したのかもしれない。

「ゾムさん！」

思わず、Aも路地に飛び込んだ。そこには、ボロボロになった不良五人が倒れ込んでいて、また随分と痛々しい光景が広がっていて、目眩がしそうになる。

「お嬢。あんまこっち来ん方がええ。」

ゾムは、相手のものであろう血が服についていて、Aにそれを見せないためか慌ててパーカーを脱ごうとしていた。しかし、パトカーの音は確実に近づいて来ている。服についた血も、ぐちゃぐちゃになっている男たちも、本当は怖かった。だけど、今はそんなのを気にしている場合じゃない。

「そんなのいいから。行こ！」

Aは手を伸ばして、ゾムの腕を掴んだ。それから引っ張って、急いで路地から出る。パトカーの音はすぐそこまで来ていて、全速力で走った。
走る、走る、走る。つい最近まで野山を駆け回っていたはずなのに、こんなに一生懸命走るのは久しぶりで、土踏まずが痛かった。だけど、そんなのは止まる理由にはならない。息が切れる。吸い込むのも吐き出すのも苦しくて、顔が熱くなるのを感じた。苦しい、けど、まだ止まれない。全身から汗が吹き出るようだった。パトカーがどこにいるのか分からない。だけど、サイレンの音が鳴り止むまで、安心出来なかった。疲れはじめて、もう歩きたい、そう思ったときだ。

「わぁっ！？」

突然身体が宙に浮かぶ感覚。ぐらりと目線が低くなったのに驚いて、喉がひゅっと絞まる。何が起こったのかと理解するのに、そう時間はかからなかった。ゾムが、俵担ぎをしているのだ。そこはもっとこう、お姫様抱っことかあるんじゃないの、なんて普段なら思うのかもしれない。しかし、ただその時は風を切って進むゾムに、Aは不思議とワクワクを感じていた。
十段くらいある下りるための階段を前に、ゾムはスピードを緩めない。最高速度のまま行くから、Aは今すぐ下ろしてほしかった。

「え！？ゾムさ、下ろし！」
「飛ぶぞ！」
「ぎゃああああ！！」

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