【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ7)

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お上りさんページ7

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Aはそれで一瞬だけ、聞かなきゃ良かったと後悔した。視線を落として、試着室の薄っぺらくてボソボソのシートをつま先でなぞる。すると、ゾムが口を開いた。

「ええんちゃう？」
「⋯⋯！」

この瞬間、さっきまで感じていた後悔が吹き飛んだ。それと同時に、見た目が怖いからと敬遠していたけれど、ちゃんと話したらもしかしたらそんなに怖い人じゃないのかも、とほんのちょっぴり思った。
その後、新品でツヤツヤのローファーを買ったり、学校指定の鞄を買ったり、必要な教材を揃えるために長い時間あちこちを何度も往復して駆け回った。慣れない街中を巡ったものだから、Aは段々と足に疲労が溜まっていて、途中で立ち止まりそうになった。しかし、これも全部自分のため。それに付き合わせてしまっているゾムや運転手の方が辛いだろう。そう思えば、早く終わらせることの方が優先だった。最後に大きなデパートで文房具を買い足して、クタクタになった頃、ゾムの方を見る。

「少し休憩しませんか。」
「うん、せやな。」

なんだ。案外大丈夫なんじゃないか。Aは一日一緒に駆けずり回って、淡い親近感が芽生え始めていた。私ってもしかしてチョロい？と疑問を持つのもおかしくはない。ゾムは基本的には口出しをしないけれど、質問すれば必ず聞いてくれたし、答えてもくれる。これを探してるんですけど、何処にあるのか見つけられませんと言うと、ここで働いていたのかと勘違いしそうなくらい素早く見つけて教えてくれた。
その働きっぷりには目を見張るものがあり、流石に休憩くらいは挟まなければ失礼にあたるというもの。少ないものではあるが、祖母相手にお手伝いをしてコツコツ稼いできたお駄賃くらいならある。

「ここでも大丈夫ですか？」

何処のお店が良いのかも分からなかったから、とりあえずAの住んでいた田舎にはなかったファストフード店を指さしてみる。田舎でも名前だけは有名で、一度は行ってみたいと思っていたところだ。定期的に流れる軽快な音楽と揚げ物の匂いで、お腹のあたりがうずうずする。
フードの奥でこくりと頷いたゾムを見て、Aは飛び上がりそうなくらい嬉しかった。ここで本当に飛び上がったりしたら、お上りさん丸出しだからしなかったけれど。

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