【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ10)

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入学式ページ10

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入学式の日、緊張と期待に胸のあたりがきゅうと押し潰されるような感覚を覚えながら、新たな環境へと踏み出した。桜の木は既に青々とした葉が芽吹きはじめていて、少しサイズの大きい制服を着た新入生たちと似たもの同士だった。
校長先生の話が長いのは、田舎も都会も変わらないらしい。Aも最初の三分くらいは一生懸命聞いていたのだけれども、それ以降は耳に蓋がついてしまったかのように一切聞いていなかった。入学おめでとうございます、最後にもう一度そう言って締め括られたその言葉だけはやけにしっかりと心に響いた。

「これからよろしくね。」
「うん！よろしく！」

友達になるのってこんなに簡単だったんだ。Aは拍子抜けするほど驚いた。つい先日仲良くしろ、と言われて上手くいかなくて困っていた自分がまるで別人かのように思えたから。新しいクラスは、もちろん知らない人しかいなかったけれど、みんな垢抜けていてオシャレな子が多かった。それで、担任の先生からの話や何かしらの会が終わると、誰からともなく近くの席にいる子に話しかけたり、話しかけられたり、そんなふうにして友達になるのはあっという間だった。
仲良くなれそう、そう思えてホッとした。

みんなは親と一緒に入学式に来ていて、Aはちょっぴり寂しい思いをした。父親はお仕事で来られないと聞いていたから。まぁ、ヤクザの父親が来ても困るけれど。
朝は車で送ってもらったから、どうやって帰るのかそういえば聞いていなかったけれど、駅からの帰り道は覚えているし、最寄り駅の名前も覚えている。とりあえず電車にさえ乗ることが出来れば、スマホで調べれば良いし、なんとか帰れるだろう。帰りにどこか寄る？なんて話をしながら、仲良くなった子たちと学校の外へと向かった。

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